
協和エクシオを退職し、就職活動を経て、株式会社日本能率協会総合研究所への再就職が決まりました。実は、この時「ファシリテーション」に魅力を感じており、グループインタビュー等を中心としたコンサルのようなことがしたいと思い、日本能率協会総合研究所でもそのような仕事を手掛ける部署への配属を希望していましたが、残念ながら採用いただくことはできませんでした。ただ、国や自治体をクライアントとする社会環境研究本部の環境研究部からオファーをいただき、面接を経て無事に就職することができました。
環境研究部は建設リサイクルを中心とする仕事を手掛けており、全国の工事現場から収集されるコンクリート塊や建設発生木材等の発生量や再資源化施設への搬出量からリサイクル率を算出するツールのメンテナンスや、全国で行われる建設リサイクルの意見交換会の事務局といった仕事に従事しました。
その後、まちづくり、行政のデジタル化、働き方改革、介護関連、新規事業開発と、様々な仕事に携わりました。ここでは、印象に残っている3つのプロジェクトについて、ご紹介したいと思います。
1つ目は、環境研究部時代に経験した、バイオマス関連のCO2削減効果を算出するための原単位を算出するプロジェクトのご紹介です。これは、河川から発生する刈草や道路の剪定から発生する剪定枝を下水処理場にて嫌気性消化し、発生するメタンガスを有効活用する方法がテーマとなっており、従来の堆肥、プールの加温、単純焼却といった方法と比べて、どの程度CO2削減効果があるかを算出することを目的としたものでした。全部で10パターンほどの有効かつ方法について、全て刈草や剪定枝の単位重量あたりのCO2削減量を算出するための原単位を求めるもので、報告書は実に300ページくらいになり、そのほとんどが計算式という、なかなか稀有なプロジェクトでした。プロジェクトが遅延し、当時の本部長と一緒にクライアントのところに伺い、謝罪も含めた打ち合わせをしたことがありました。このときの打ち合わせは、14時から20時くらいまで続き、ずっと説明していた私はへとへとでしたが、帰りのタクシーで横で聞いているだけだった本部長が「いや~、疲れたね」とおっしゃったときに、「あなたは横で聞いていただけでしょ」と思いながら苦笑してしまったことを覚えていますが、今思えば、隣でほとんど理解でいない計算式の説明を6時間ずっと聞いているというのは、本当に疲れるだろうなと思います。上司にはご迷惑をかけてしまいましたが、このときに「佐野は根性があるな」と認めてもらえたのではないかと思っています。
2つ目は、労働政策研究部に配属されていたときに経験した、企業がボランティア活動を行う際のマニュアルを作成したプロジェクトです。大学の先生やボランティアに関する関係機関、企業でボランティア活動を推進する部署に配属されている方などから構成した委員会を中心に、文献調査やヒアリング調査で得た事例などを取りまとめ、企業がボランティア活動を推進するための手順をマニュアルとしてまとめたプロジェクトです。ここでは、「企業のボランティアの推進」という共通の目的がある中でも、委員のそれぞれの立場の違い等から出てくる意見が微妙に異なるものがあり、国としての作成物としてバランスに欠いたものにしないようにうまく取りまとめるのに、非常に苦労した経験をしました。ただ、元々ファシリテーションに興味があり、委員の方々から色々な意見を引き出し、議論を活発化して、一つの成果物を作成していくプロセスは、大変面白く、熱心に意見を出していただいた委員の方々の期待に応えられるように必死に頑張ったことを覚えています。委員会の座長は母校である立教大学の中村先生にお願いしていたこともあり、打ち合わせのために久しぶりに母校を訪れたことも、よく覚えています。ここで作成したものは厚生労働省のホームページに公開されていますので、よかったらご覧いただければと思います。
https://work-holiday.mhlw.go.jp/material/pdf/category4/20200522_1.pdf
3つ目は、新規事業を開発する部署で介護事業所向けに開発した、ご利用者様の週間スケジュールと、スタッフの稼働スケジュールを連動させる「介ソル」というシステムを作ったプロジェクトです。有料老人ホームや訪問介護、訪問看護事業を手掛ける株式会社ACGと共同で開発したもので、エクセルとアクセスを使ってプロトタイプを作成し、最終的にSaaS型のシステムとして構築しました。SE時代以来、本格的なシステム開発を経験し、プロトタイプを作成した際にはプログラミングも行い、SaaS型のシステム開発では外注先の管理も含めたプロジェクトマネジメントを行い、特許出願といった経験もでき、非常にエキサイティングな経験ができました。結果的にビジネスとして成功させることはできず、会社として新規事業を一旦終了することが決まり、残念ながら介ソルを世に送り出すことはできませんでした。これをきっかけに、ACGに転職したり、その後起業をするときもACGから出資いただくなど、ACGには大変お世話になっております。介ソルは今でもACGで運用されており、大変うれしく思っています。
これで、代表の履歴書は一旦終了とします。これまでご拝読いただき、誠にありがとうございました。