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Excel業務棚卸の限界|JOARSのツリー構造が解決する3つの問題

2026-08-18|note|エクセル・ファンクションレイヤー・JOARS・業務棚卸表・工房会員

noteに掲載した記事をブログにしました。

 

▸▸▸判断の進化 シリーズ



本記事は note で先行公開した記事を、加筆・再構成したものです。

 

はじめに:FL階層で書き始めた業務棚卸表が、必ず止まる場所

同シリーズの前回記事「ファンクションレイヤー入門」で、業務分解の階層モデルを紹介しました。

営業部の「商談」と製造部の「組立」は粒度が違う。FL3-FL4-FL5の3階層で整理しましょう、という話でした。

今日は、その続編です。

 

「FL階層で業務棚卸を作ろう」と決意したとき、ほぼ全員がExcel(またはGoogleスプレッドシート)を開きます。

 

最初の30分は順調です。

 

FL3「受注処理プロセス」と書く。

FL4「与信確認」「在庫引き当て」「出荷準備」と書く。

FL5を書いていく。

——でも、ある段階で、必ず止まります。

 

業務棚卸表が、Excelで作りきれないんです。

今日は、その「3つの壁」と、それを解決するJOARS(ジョアース)というツールの話をします。

 

1. 壁①:FL3とFL4を毎回コピペ問題

最初の壁です。

たとえば、FL3「受注処理プロセス」の下に、FL4「与信確認」があって、その下にFL5が5個あるとします。

  • FL5: 与信ランクを照会する
  • FL5: 過去取引履歴を確認する
  • FL5: 与信限度額をチェックする
  • FL5: 承認者にエスカレーションする
  • FL5: 結果を記録する

これをExcelで書くと、こんな表になります。

FL3 FL4 FL5
受注処理プロセス 与信確認 与信ランクを照会する
受注処理プロセス 与信確認 過去取引履歴を確認する
受注処理プロセス 与信確認 与信限度額をチェックする
受注処理プロセス 与信確認 承認者にエスカレーションする
受注処理プロセス 与信確認 結果を記録する

お気づきの通り、「受注処理プロセス」と「与信確認」を、5行分コピペしています。

 

なぜか。

FL3とFL4の列を空欄にすると、Excelでフィルタやソートをしたときに、データが分散して扱えなくなるからです。

 

「与信確認のFL5を全部見たい」と思ってFL4列でフィルタすると、空欄の行は出てこない。だから、しょうがなく全行に書き込む。

これ、FL3が3本、FL4が各3本、FL5が各10個の会社だと、何回コピペが発生するか分かりますか?

FL3を書くのが90回、FL4を書くのが90回、合計180回のコピペ。

これ、手作業でやると本当に消耗します。

 

そして、最大の問題は、コピペミスが必ず混ざることです。

FL4を「与信確認」と書くつもりが、ある行だけ「与信チェック」になっていたら、フィルタで漏れる。

データとしては破綻している。でも、見た目では気づかない。

 

2. 壁②:セル結合の誘惑

コピペ地獄に疲れた人が、次にやることが決まっています。

「見た目を整えるためにセル結合する」。

5行のFL4列を結合して、「与信確認」と1回だけ書く。一見、スッキリします。表が読みやすくなる。

 

——でも、これをやると、業務棚卸表が死にます。

 

セル結合が入った表は、こんな状態になります。

  • ソートできない(結合セルが分断される)
  • フィルタが変な動きをする(結合されている部分が消える)
  • 集計式が崩れる(範囲が変な計算をする)
  • 別の場所にコピーすると結合が崩れる
  • CSVで出力すると、結合されていた部分が空欄になる

業務棚卸表の本当の価値は、「データとして集計・分析できること」です。

判断点が何個あるか、どの部署に集中しているか、どのFL5とどのFL5がデータ項目を共有しているか——こういう分析ができてこそ、業務改革の起点になる。

 

でも、セル結合が入っていると、これが全部できなくなる。

つまり、業務棚卸表が「資料」になって、「データ」じゃなくなるのです。

 

これは見た目の問題ではなく、構造の問題です。

Excelは、本来「正規化された表」を扱うツールです。セル結合は、人間が見やすくするための補助機能であって、データ構造の表現ではない。

業務棚卸表のように「親子関係を持つ階層データ」を、Excelの平坦な表形式で表現しようとすると、必ずどこかで歪みが出る。セル結合は、その歪みの妥協策にすぎないのです。

 

3. 壁③:FL5追加が地獄

そして、3つ目の壁。これが一番ボディブローのように効いてきます。

業務棚卸表は、最初に全部書ききれるものではありません。

実際の進め方は、こうなります。

  1. 一旦、ざっくり書いてみる
  2. 現場ヒアリングする
  3. 「あ、この作業、抜けてました」と追加する
  4. また現場ヒアリングする
  5. 「これは2つの作業に分けるべきです」と修正する

つまり、棚卸表は生き物です。育てていくものです。

ところが、Excelで途中にFL5を1個追加するとどうなるか。

  • 該当する行に移動する
  • 行挿入する
  • FL3とFL4を上の行からコピペする
  • 工程ID(TaskID/StepID)を再計算する
  • 隣の列(次工程ID)との整合性を確認する
  • 関連するデータ項目を更新する

これ、5分はかかります。「ちょっと追加するだけ」が、5分の作業になる。

現場ヒアリングで「あ、この作業抜けてました」と言われたとき、心の中で「あとでやろう」と思って、忘れます。

そして、棚卸表は「現場の実態と乖離した古い資料」になる。

 

これが、私が「Excelの業務棚卸表は半年で死ぬ」と言っている理由です。

 

最初の作成時点では、まあ動いている。

でも、追加・修正のコストが高すぎて、メンテナンスされなくなる。半年後に見たら、現場の業務はもう変わっていて、棚卸表は古い情報のまま放置されている。

 

棚卸表が死ぬのは、現場が悪いのではない。ツールが悪いのです。

 

4. JOARSのツリー構造が、3つの壁を同時に解決する

これら3つの壁を、同時に解決する道具がほしい。それを目指して作ったのが、私たちのJOARS(ジョアース)というツールです。

 

JOARSの業務棚卸表は、見た目はExcelに似ています。でも、内部構造が全く違います。

 

「ツリー構造」でデータを持っているんです。

FL3「受注処理プロセス」というノードがあって、その下にFL4「与信確認」「在庫引き当て」というノードがぶら下がる。さらにその下にFL5がぶら下がる。

データとしては、こうなっています。

受注処理プロセス
├── 与信確認
│   ├── 与信ランクを照会する
│   ├── 過去取引履歴を確認する
│   ├── 与信限度額をチェックする
│   ├── 承認者にエスカレーションする
│   └── 結果を記録する
├── 在庫引き当て
│   └── ...
└── 出荷準備
    └── ...

ツリー構造で持っているから、何が変わるか。

 

解決①:コピペ不要

FL3を1回書けば、その配下のFL5全部に親子関係で紐づきます。FL3とFL4のコピペは、一切不要。

データ上は親子関係なので、フィルタやソートも自由自在。

「与信確認のFL5を全部出して」と言えば、子ノードが全部出てくる。Excelのフィルタとは仕組みが違うのです。

 

解決②:セル結合不要

ツリー構造なので、見た目もツリーで表示できる。

Excelで言うところの「セル結合した状態」が、データ構造として最初から実装されているわけです。

しかも、データとしては正規化されているので、CSV出力、集計、分析、全部できる。見た目はツリー、データは正規化——これがJOARSの設計思想です。

 

解決③:FL5追加は「+ボタン1回」

FL4ノードに対して、「+子追加」ボタンを押すだけ。新しいFL5が追加されます。

工程IDの自動補完、隣のFL5との関係付け、CRUD表への自動展開、全部勝手にやってくれます。

追加コストが、Excelの1/10以下になる。

これが大事なんです。追加コストが低いから、棚卸表が育つ。

現場ヒアリングで「あ、追加します」が、本当にその場で追加できる。

棚卸表が生き物として育つ。そして、半年経っても、1年経っても、現場の実態を反映し続ける。これが、業務棚卸表の本来あるべき姿です。

 

5. それ以外にJOARSができること

業務棚卸表をツリー構造で持つと、副次的に色々できるようになります。

 

業務フロー(BPMN)の自動生成

棚卸表のFL5の連鎖(TaskID/StepIDの順序)から、業務フロー図が自動的に描かれます。手でフローチャートを描く必要がない。

 

CRUD表への接続

FL5アクティビティ × データ項目のマトリクス(CRUD表)が、棚卸表から自動展開される。

「どの作業がどのデータを触っているか」が一目瞭然になる。

 

バージョン管理

AS-IS(現状)とTO-BE(理想)の棚卸表を、別バージョンとして管理できる。差分を追える。

 

判断点の集約

FL5の中の「判断点」だけを抽出して、判断地図を作れる。どこに判断が集中しているかが見える。

——これらは全部、ツリー構造で正規化されたデータがあるから実現できる機能です。Excelからは絶対に出てこない発想です。

 

6. 「触ってみないと分からない」ので、無料で使えるようにしました

ここまで読んで、「ツリー構造ってそんなに違うの?」と思った方もいるかもしれません。

正直、文字で説明しても、限界があります。

 

なので、JOARSは工房会員フリープランで、無料で使えるようにしました。

 

フリープランで、業務棚卸表を1本作れます。

E2Eで完結する業務プロセスを1個、FL3-FL4-FL5で書いてみてください。30分くらいで体感できます。

 

「Excelの何が悪かったのか」「ツリー構造で書くと何が楽になるのか」——これは、実際に触ってみるのが一番です。

 

まとめ

今日のまとめです。

  • Excelで業務棚卸表を作ると、3つの壁にぶつかる
    • 壁①:FL3とFL4を毎回コピペ
    • 壁②:セル結合の誘惑(しかしデータが死ぬ)
    • 壁③:FL5追加が地獄
  • これらは、Excelの平坦な表構造で「階層データ」を扱おうとしているから起きる
  • JOARSはツリー構造でデータを持つので、3つの壁を同時に解決する
  • 副次効果として、業務フロー自動生成・CRUD表・バージョン管理・判断点抽出ができる

業務棚卸表が「半年で死ぬ」のは、現場が悪いのではありません。ツールが悪いのです。

 

棚卸表を「生き物」として育てたい方は、JOARSのフリープランで、まず1本作ってみてください。

 

同シリーズの「ディシジョンテーブル vs ディシジョンツリー」記事では、業務棚卸表の最後の難関「ベテランしかできない判断、どう書くか」を扱っています。あわせてご参照ください。


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本記事は、代表 佐野尚人のnote「判断の進化」マガジンで先行公開した記事を、HP用に加筆・再構成したものです。
note原典版はこちら:[Excel業務棚卸の限界 — JOARSのツリー構造が解決する3つの問題]