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DEM入門|業務改革の打ち手は、4象限で変わる

2026-09-08|note|DX・TOC・JOA・ファンクションレイヤー・DEM・ゴールドラット・ボトルネック・フレームワーク

noteに掲載した記事をブログにしました。

 

▸▸▸判断の進化 シリーズ



本記事は note で先行公開した記事を、加筆・再構成したものです。

 

はじめに:「全部、標準化しよう」は半分間違い

業務改革・DXのプロジェクトで、よく聞く言葉があります。

「全部、標準化しよう」

業務マニュアルを作り直し、判断基準を文書化し、AIに任せられる部分は任せる。一見、正しい方針に聞こえます。

——でも、これ、半分は正解で、半分は間違いです。

会社の業務には、標準化していい業務と、絶対にしてはいけない業務があります。そして、それを見分ける道具が、今日紹介する「DEM(Decision Evolution Map:判断進化マトリクス)」というフレームワークです。

業務改革・DXに取り組む経営者・現場リーダーなら、知っておく価値があります。

 

1. DEMという2軸マトリクス

DEMは、業務(より正確には、業務の中の判断)を2つの軸で分類するマトリクスです。

  • 横軸:環境の変動性(その業務を取り巻く状況は、安定しているか、変動的か)
  • 縦軸:価値創出の源泉(その業務は、効率を追求すべきか、価値創造を追求すべきか)

この2軸で、業務を4つの象限に分けます。

  環境:安定 環境:変動
価値創出 ← 創造 戦略設計領域(半構造化) イノベーション領域(暗黙知優位)
価値創出 ← 効率 標準化領域(ルール化) 適応運用領域(ケース依存)

ピンと来ないと思うので、具体例で見ていきます。

 

2. 4つの象限と、それぞれの世界

標準化領域(環境:安定 × 源泉:効率)

ここは、ルール化が王道の世界です。

  • 経理の月次決算
  • 受注処理
  • 入金確認
  • 経費精算

業務手順が明確で、環境(取引先・法規制・社内ルール)も安定している。だから、マニュアル化できる、AIに任せられる、RPAで自動化できる。世間の「DX」「業務改革」は、ほぼこの領域の話です。

適応運用領域(環境:変動 × 源泉:効率)

ここは、ケース対応の積み重ねの世界です。

  • 顧客クレーム対応
  • 設備トラブル対応
  • 緊急受発注の調整

ルール化はできても、ケースの種類が無限にあるので、機械的なロジックでは捌けない。「過去の対応事例」を蓄積して、現場が判断するしかない。標準化しようとすると、現場の柔軟性が殺される領域です。

戦略設計領域(環境:安定 × 源泉:創造)

ここは、半構造化の判断の世界です。

  • 新製品の価格戦略
  • 中期経営計画の策定
  • 採用方針の決定

判断軸はある程度言語化できるが、最終的には総合判断。経営層が「いろんな材料を見て決める」場所。機械的な答えはない。でも、議論の土俵は作れる領域です。

イノベーション領域(環境:変動 × 源泉:創造)

ここは、暗黙知優位の世界です。

  • 新規事業の構想
  • R&Dの方向性決定
  • ベンチャー投資の判断

過去の経験則が通じない。明日の正解と今日の正解が違う。経営者・トップ研究者の「勘」が頼り。ルール化したとたんに、機会を逃す領域です。

 

3. 業務改革の打ち手は4象限で変わる

ここからが、DEMの本当の価値です。

業務改革・DXの打ち手は、4象限のどこにあるかで全く違います。

領域 主な設計成果物 打ち手
標準化 ディシジョンテーブル / 業務ルール / 入力制御 ルール化→自動化(AI/RPA)
半構造化(戦略設計) 仮説検討シート / 比較軸 / レビュー論点 議論の土俵を作る(フレームワーク提供)
適応運用 判断観点表 / 事例集 / 例外対応ガイド 過去事例の蓄積と検索性向上
イノベーション 探索テーマ / 実験条件 / 学習ログ 試行錯誤のサイクルを回す環境整備

業務改革で陥りがちな失敗は、全業務に「標準化」の打ち手を当てようとすることです。

経理に「ディシジョンテーブル」を入れるのは正解。でも、新規事業の構想にDTを書こうとすると、思考が縛られて、機会損失になる。領域が違えば、打ち手が違うのです。

逆に、イノベーション領域の「探索テーマ・実験条件」を、経理に当てはめても意味がない。「経費精算の創造的な進め方を実験しよう」とは、ふつう言わないですよね。

DEMを使うと、「この業務はどこ?だから打ち手はこれ」という判断が、論理的にできるようになります。

 

4. 第3の軸:判断の「詰まり」

DEMは、実は2軸では終わりません。第3の軸があります。

それが、「判断の詰まり」です。立体DEMでは、これを高さ(Z軸)として表現します。

「詰まり」とは何か。具体的にはこういう状態です。

  • ベテラン1人に判断が集中している(属人化)
  • 判断基準が暗黙知のまま、誰も言語化できていない
  • 判断のたびに上司に確認しないと進まない(承認待ち渋滞)
  • 同じ判断を、毎日繰り返し、人力でやっている

これが、業務の「詰まり」です。

そして、4象限のどの領域にも、固有の「詰まり」が発生します。

  • 標準化領域の詰まり:ルール化できているのに、Excel・紙・FAXで運用していて遅い
  • 適応運用領域の詰まり:過去事例が個人のメモに散らばっていて、再利用できない
  • 戦略設計領域の詰まり:議論の土俵が毎回違って、結論が場当たり的
  • イノベーション領域の詰まり:実験の学びが個人に閉じていて、組織知になっていない

立体DEMでは、業務ごとにこの「詰まり」の高さを評価して、詰まりが高い場所から手を入れるという考え方をします。

 

5. JOAは「詰まりを削り取る」設計

ここまで来ると、私たちのフレームワーク「JOA(Judgment-Oriented Architecture:判断志向アーキテクチャ)」が何をしているか、見えてきます。

JOAは、業務全体をDEMにマッピングし、各領域の「詰まり」を削り取る設計です。

  • 業務棚卸表で、業務全体(FL3-FL4-FL5)を見渡す
  • 各FL5の判断点を、DEMの4象限にマッピングする
  • 詰まりが高い場所から、領域固有の設計成果物(DT・観点表・事例集・実験条件)で詰まりを削る

これが、「全部標準化」ではない、判断の性質に応じた業務改革のやり方です。

そして大事なのは、詰まりが削れたら、領域そのものは変えなくていいということ。イノベーション領域の業務を、無理に標準化領域に移そうとしない。「イノベーション領域のまま、詰まりが少ない状態」が、目指す姿です。

 

6. 自社の業務をDEMにマッピングするには

「自社の業務、DEMでどう分類すればいいか?」と思った方へ。実践の手順は、こうなります。

  1. 業務棚卸表を作る(FL3-FL4-FL5の3階層で。詳しくは同シリーズ「ファンクションレイヤー入門」記事へ)
  2. FL5の中から、判断点を抽出する(人が考えて決めている箇所)
  3. 各判断点を、DEMの4象限にマッピング(環境の変動性 × 価値創出の源泉)
  4. 各判断点の「詰まり」を評価(属人化・承認待ち・基準不在など)
  5. 詰まりが高い順に、領域固有の設計成果物で打ち手を当てる

この5ステップを、私たちのコンサルティングでは「JOAワークショップ2日間」で実施します。やってみると、自社の業務のDEM分布が出てきて、「あ、うちは標準化領域の詰まりが圧倒的に多いな」「うちはイノベーション領域の知見が組織に残っていないな」といったことが見えてきます。

これが、業務改革の「地図」になります。

 

7. なぜDEMが必要か(背景)

DEMは、私たちが独自に組み立てたものではなく、いくつかの理論的な系譜があります。

  • TOC(制約理論・ゴールドラット):ボトルネックに集中する考え方
  • カーネマン(システム1/システム2):人の判断には2系統あるという発見
  • クライン(自然意思決定論・RPDモデル):熟達者の判断は分析ではなくパターン認識

特にカーネマン×クライン合意(2009年)——「専門家の直感が信頼できるのは、環境が安定していてフィードバックが十分にある領域に限る」——という発見が、DEMの横軸(環境の変動性)の根拠になっています。

つまり、DEMは「業務改革コンサルが現場で工夫して使っている2軸マトリクス」というだけでなく、人間の意思決定研究の蓄積を土台にした、根拠のあるフレームワークです。

まとめ

今日のまとめです。

  • 業務改革で「全部標準化しよう」は半分間違い
  • 業務(判断)は、DEMの4象限(標準化・適応運用・戦略設計・イノベーション)に分かれる
  • 打ち手は領域ごとに違う。同じ手は使えない
  • 第3の軸「詰まり」の高さを評価し、詰まりが高い場所から領域固有の設計成果物で削る
  • これが、JOAという業務改革フレームワークの中核

「うちは全部標準化したいんだ」と言っていた経営者も、DEMを知ると、考え方が変わります。全部標準化は、業務改革の暴走です。

業務には、性質がある。その性質に合った打ち手を当てる。これが、業務改革の成熟です。

なお、AS-IS(現状)と TO-BE(理想)でDEMの象限が異なる判断点については、同シリーズの「あるべき姿を見せても業務は変わらない|象限遷移の打ち手」記事で詳しく扱っています。


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株式会社ファインドルートでは、中小企業の業務改革・DX推進をご支援しています。DEMによる業務診断で、自社の判断分布を可視化し、領域ごとに最適な打ち手を処方する業務改革をご提供します。

  • 業務棚卸を通じた判断ボトルネックの可視化
  • 判断志向アーキテクチャ(JOA)に基づく業務フロー再設計
  • DEM(判断進化マトリクス)による打ち手の優先順位付け
  • 業務システム実装支援(生成AI・ノーコード・SaaS活用)

「うちの業務にも当てはまるか、相談してみたい」という経営者の方は、お気軽にお問い合わせください。

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本記事は、代表 佐野尚人のnote「判断の進化」マガジンで先行公開した記事を、HP用に加筆・再構成したものです。
note原典版はこちら:[DEM入門 — 業務改善の打ち手は、4象限で変わる]