CASE 02|建設会社工程と人の配置の判断が、ベテランの現場監督ひとりに集まっていた。

従業員80名の中堅建設会社。施工管理(工程計画から完工まで)を3つのサイクル(工事計画・準備/施工実行・管理/品質・安全管理)に分け、5つの判断点を取り出した事例です。

実務をもとに再構成した想定ケースです。社名・数字は実在の会社のものではありません。

相談のきっかけ「ベテランの現場監督がいないと、工事が回らない」

DXは進めてきました。日報はタブレット、図面は電子化済み。それでも、工程計画・人員配置・施工手順の変更の判断は、すべてベテランの現場監督の頭の中にありました。マニュアルを作っても、結局は「あの人に聞かないと分からない」。退職が経営課題だと分かっていても、何をどう言葉にすればいいかが分からない状態でした。

症状(問診で〇がついたもの)

  • ベテランに聞かないと決まらない。その人が休むと止まる
  • 引き継ぎで、手順は渡せても「勘どころ」が渡せない
  • DXの道具を入れたのに、判断の場所は変わっていない

診察で見たもの5つの判断のうち3つが、工事部に集まっていた。

フォーメーションマップで、営業・工事部・協力会社・施主の役割のリレーを1枚にしました。判断の印は工事部に3つ集中。次に5つの判断を「何を見て、どう決めているか」で表にし、判断の性質で分けました。

判断点の表

判断見るもの性質
工程計画は実現可能か天候・資材・人員。経験則に強く依存言葉にすれば引き継げる
人員配置は適切か各工程に必要な技能と人数。技能の把握が属人的言葉にすれば引き継げる
施工手順を変えるべきか現場の状況の変化。品質を生む源泉でもある人の判断が要る
品質基準を満たしているか設計仕様・品質基準。チェックリスト化済みルールで決まる
安全上の問題はないか基準はあるが、現場の読みが要る人の判断が要る

見えたこと属人化は2種類あった。「全部マニュアル化」は的外れだった。

工程計画と人員配置は、今は属人的でも、過去の工事データや技能の表を積めば引き継げる判断でした。施工手順の変更と安全の最終判断は、標準化でなく、人の判断を支える仕組みが正解でした。品質検査はすでにルールが明確で、デジタル化すればすぐ効く判断でした。

属人化の正体は、判断が言葉にされないまま、特定の人に積み上がっていることでした。この区別がなければ、「全部マニュアル化しよう」という的外れな施策になっていたはずです。

処方表にできる判断は蔵書に。人に残す判断は、経験談として育てる。

段階は3つ。①品質検査のデジタル化と、人員配置の基準の言語化(1〜2か月。小さな成功を先に作る)。②過去の工事データと、現場のトラブル事例の蓄積(3〜6か月。ベテランの知見を会社の資産に)。③安全チェックの標準化。ただし現場の最終判断は人が行う前提で(6か月〜)。

※蔵書=業務の中の判断を、AIが読みやすいデータにして蓄えたもの。

判断の図書館の言葉で言えば、表にできる3つの判断は基準の表をそのまま蔵書にし、例外が出たら申請で育てます。人に残す2つの判断は、現場の実例と経験談を記録して、振り返り会で若手に引き継ぎます。

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