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コーディングから20年離れた経営者が、AIと業務システムを作った3ヶ月|JOARS開発の実録

noteに掲載した記事をブログにしました。

 

▸▸▸1人社長×AI CEO シリーズ



はじめに:DXコンサル会社の経営者として感じていた違和感

業務改革やDXのコンサル会社を名乗っているのに、自社の業務システムは外注している、という会社は意外と多いみたいです。

 

私自身、ずっと小さな違和感を持っていました。

「自社の業務すらデジタル化できない人間が、他社のDXを語っていいのかな」と。

 

私は「JOA(Judgment-Oriented Architecture:判断志向アーキテクチャ)」という業務改革手法を提唱しているコンサル会社の代表です。

 

そして、JOAを実践するための業務システム「JOARS(ジョアース)」を、生成AIと一緒に2〜3ヶ月かけて、自分自身で作りました。

 

私は元SE出身ではあるのですが、20年近くコードを書く仕事から離れています。

今のJOARSのコードを、ゼロから自分で書けと言われたら、絶対に無理です。

それでも、JOARSは今、ちゃんと動いています。

 

これは「コードを書ける経営者」の話ではありません。

 

「コーディングからは20年のブランクがあるけれど、業務とAIが分かる経営者」の話です。

 

中小企業の経営者の方にも参考になる実践記録としてお読みください。

1. なぜ自分で作ろうと思ったか

きっかけは2つありました。

 

1つ目は、見積金額です。

JOARSのような業務SPA(シングルページアプリケーション)をまともに外注すると、おそらく最低でも500万円はかかります。

創業2年目の会社にとって、ちょっと出せる金額ではありませんでした。

 

2つ目は、看板の問題です。

弊社では「業務改革」を売っています。

なのに、自社の業務改革ツールを外注で作るのは、何か違う気がしていました。

 

最初は、「まあ、できるところまでやってみるか」くらいの軽い気持ちで始めました。自信があったわけではありません。

2. 生成AIコーディングツール「Claude Code」との出会い

実は、ChatGPTでコードが出ることは前から知っていました。

正直、ChatGPTとのチャットだけでGAS(Google Apps Script)+HTMLのアプリが書けて、スプレッドシートを使いながらでもやりたいことができたのは、それだけでもすごいことでした。

ただ、複数ファイルを跨いで、認証もデータベースも組み込まれた、本格的なWebアプリを作ろうなどとは、全く想定していませんでした。

 

転機になったのは、AnthropicのClaude Codeに触れてからです。

これまでの「コード生成AI」と決定的に違うのは、

 

「プロジェクト全体のファイル構造を理解した上で、複数ファイルを跨いで修正してくれる」ことでした。

 

「この機能を追加したい」と言えば、関連する5〜6個のファイルを同時に編集して、整合性のある変更を加えてくれます。

「これは、もしかしたら本当に作れるかもしれない」と思った瞬間でした。

3. AI開発で最初に直面した壁——「仕様を伝える難しさ」

ここからが本題です。Claude Codeを使い始めて、最初の壁にぶつかりました。それは「仕様を伝える難しさ」です。

 

AIは、曖昧な指示を出すと、曖昧なものを作ります。

「業務棚卸表を作ってほしい」と言うと、Excelの表計算みたいなものを作ってきます。

 

「FL3-FL4-FL5の階層をツリー構造で表示して、それぞれにDEM象限の判定結果を表示して、判断点はバッジで強調して...」と、こちらが具体的に伝えれば伝えるほど、AIはきちんと作ってくれます。

 

つまり、AIに開発を依頼するということは、

本質的に「自分が何を作りたいか」を、自分の言葉で言語化する作業でした。

 

ここで救われたのは、私には「JOAバイブル」という236ページの文書があったことです。

JOAの思想・体系・ワークシート・実装方針を、熟慮を重ねて書き溜めてきた文書です。

これをAIに渡すと、私の頭の中の構造を、ほぼそのまま理解してくれます。

実は、このことは最初から想定していました。

バイブル的なものを作れば、あとはAIが理解して、幅広く活躍してくれるのではないか、と。

 

逆に言えば、「何を作りたいか」を自分で深く分かっていない人が、AIで業務システムを作ろうとしても、難しいのだと思います。

 

AIで開発できるかどうかは、コーディング能力の問題ではなく、仕様を考える能力の問題なのだと、痛感しました。

 

これは、中小企業の経営者にとってはちょっとした朗報かもしれません。

経営者の仕事は、もともと「何をやるかを決める」ことだからです。

仕様を考える能力と、経営判断の能力は、本質的にとても近い気がしています。

4. 出来上がってきたもの

3ヶ月たって、JOARSはこんな姿になっていました。

  • マルチテナント対応:クライアント企業ごとにデータが完全分離
  • Firebase Authentication:Googleアカウントでログイン、会員マスタと照合
  • 業務改革ワークシート群(元々、全てスプレッドシートで運用していました)
    • 組織機能分担表
    • フォーメーションマップ(業務横断の関係図)
    • 判断点抽出
    • 判断点チェックシート(WS1)〜 ケイパビリティ評価(WS6)
    • DEM(判断進化マトリクス)2D/3D表示
  • 業務棚卸表:ツリー構造で階層編集、ドラッグ並び替え対応
  • 業務フロー:bpmn-jsで自動生成、FL3-4とFL4-5の二層連動
  • ディシジョンテーブル:分岐ロジックを構造化、業務フローと自動同期
  • CRUD表:ローデータからマトリクス自動生成
  • リポジトリ管理:バージョン管理(AS-IS / TO-BE切替)
  • 工房会員制度:フリーミアム3プラン

フロントエンドだけで、合計約11,000行のコードになりました(メインのファイル1つで7,400行ほど)。

 

「これ、本当に1人で作ったんですか?」と、見せた人にはよく驚かれます。

5. 開発中の、経営者としての3つの気づき

▶ 気づき1:「コーディングから離れている」と「システムを作れない」は別物だった

これは本当に大きな発見でした。

「コードを書ける人=システムを作れる人」だった時代は、もう終わっているのかもしれません。

今は、「何を作るかが分かっている人が、AIと一緒にシステムを作れる人」なのだと思います。

 

▶ 気づき2:AIと開発すると、自分の思考が整理される

AIに「なぜそう作るのか」を説明しながら作っていくと、自分の頭の中が不思議と整理されていきました。

私の場合、JOAの思想がコードという形に落とし込まれていく過程で、思想自体がさらに鋭くなっていく感覚がありました。

「DEM 4象限はそのままUIに反映できる」「判断点はテーブル設計の起点になる」など、思想と実装が相互に影響しながら磨かれていく感じです。

これは外注では絶対に起きないことだと思います。

自分で作るからこそ、自社の思想が深くなります。

 

▶ 気づき3:AI開発は「経営判断」の連続だった

「この機能を入れるか、入れないか」「どこを優先するか」「どこは妥協するか」。AI開発の現場は、判断の連続でした。

これはもう、コーディングというより経営判断に近い感じがします。

経営者がAIで業務システムを作るというのは、要するに「自社の業務を、自分の判断で設計し直す行為」だったのかもしれません。

6. 「DXコンサルが自社システムを外注する」ことについて

冒頭の話に戻ります。

業務改革を語る会社が、自社の業務システムを外注している。DX支援を語る会社が、自社の業務はExcelとメールで回している。

私は、ファインドルートを「自分でやっているコンサル」にしていきたいと思っています。

 

自社の業務システムを自分でAIと作り、自社の業務改革は自分のJOAで回す。

それを発信し続けることで、私たちのコンサルが机上の空論ではないことを、少しずつ示していけたらいいなと。

クライアントには、「うちでもこの判断構造化ができますよ」「うちでもこういう仕組みが組めますよ」と、実際にやっている事例として見せられます。

そしてこれは、私だけの話ではないのかもしれません。中小企業の経営者がAIで業務システムを作る時代は、もう始まっている気がしています。

まとめ:「コードは書けない、でも業務は分かる」中小企業経営者の選択肢

JOARSは今もアップデートを続けています。やればやるほど、まだまだ作り込める余地は見えてきます。

 

「経営者×AI開発」の試行錯誤を、これから定期的に発信していこうと思っています。

失敗談も、思想的な議論も、経営判断のリアルも、全部含めて。

 

もし「自分も自社のシステムをAIで作ってみたい」という経営者の方がいたら、お気軽にお問い合わせください。

一緒に試行錯誤するのは、きっと楽しいはずです。


JOAコンサルティングのご案内

株式会社ファインドルートでは、中小企業の業務改革・DX推進をご支援しています。「自社業務システムをAIで作りたい」「業務をデジタル化したい」という経営者の方には、まず業務棚卸を通じた「何を作るべきか」の整理からご提案します。

  • 業務棚卸を通じた要件整理(「仕様を考える」の手前の支援)
  • 判断志向アーキテクチャ(JOA)に基づく業務フロー再設計
  • 生成AI・ノーコードツールを使った業務システム実装支援
  • JOARSによる業務改革成果物の一元管理

1人社長×AI CEOシリーズについて

1人社長の会社で、AIを経営パートナーに迎えた実体験を発信しているシリーズです。

失敗談も、思想的な議論も、経営判断のリアルも、全部含めて率直に書いていきます。

同じように1人または少人数で会社を運営している経営者の方の参考になれば幸いです。


本記事は、代表 佐野尚人のnote「1人社長×AI CEO」マガジンで先行公開した記事を、HP用に加筆・再構成したものです。
note原典版はこちら:[コーディングから20年離れた経営者が、AIと業務システムを作った3ヶ月 — JOARS開発記]