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ファンクションレイヤー入門|業務分解の言葉、社内で統一できていますか

noteに掲載した記事をブログにしました。

 

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本記事は note で先行公開した記事を、加筆・再構成したものです。

 

はじめに:業務改革プロジェクトで最初にやるべきこと

業務改革のプロジェクトで、私たちが最初にやることはひとつです。

「業務分解の言葉を、社内で揃える」こと。

地味な作業に聞こえるかもしれません。でも、ここをサボると、その後のどんな分析も、どんなDXも、絶対にうまくいかなくなります。

今日は、私の師匠から伝授された「ファンクションレイヤー(FL)」という考え方を、できるだけ平易に書いてみます。業務改革のコンサルティング業界でも、たぶん知らない人の方が多い概念です。

 

1. 営業部の「商談」と、製造部の「工程」は同じ階層?

最初に、ひとつ問いを投げます。

ある会社の業務リストを見たら、こう書いてありました。

  • 営業部の業務:商談 / 見積 / 受注 / 入金確認
  • 製造部の業務:工程設計 / 材料調達 / 組立 / 検査 / 出荷

これを「業務棚卸表」として並べたとします。一見、整っているように見えますよね。

——でも、これ、揃っていません。

「商談」と「工程設計」、どちらが大きい単位の業務でしょうか?

そう。「商談」のほうが、ずっと大きい。

「商談」はお客さま1社との一連のやりとり全体を指します。一方、「工程設計」は1つの製品をつくる工程を考える作業です。

つまり、営業部の「商談」と同じ階層にあるのは、製造部の「製造」全体であって、「組立」ではない。逆に、営業部で「組立」と同じ階層の単位を出すなら、「電話を受ける」「資料を作る」「議事録を書く」といった小さい作業になります。

これが、「業務分解の言葉が、社内で揃っていない」状態です。

 

2. なぜ揃わないと困るのか

「言葉が揃っていない業務棚卸表」を作ると、何が起きるか。

「比較できない」んです。

たとえば、こんな分析をしたいとします。

  • 「うちの会社、判断業務は何個あるか?」
  • 「どの部署が、業務量が多いか?」
  • 「データを共有している業務はどれとどれか?」

これ全部、業務の単位が揃っていないと、計算できません。

営業部の「商談」を1としてカウントし、製造部の「組立」も1としてカウントすると、明らかにおかしな比較になります。「営業部のほうが業務が少ない」みたいな結論が出てしまう。実際には、商談1個の裏に、もっとたくさんの細かい作業が隠れているのに。

そして、これは業務改革の現場で、毎日のように起きています。

DXの第一歩で業務棚卸を始めて、3ヶ月かけて分厚い棚卸表ができる。でも、その棚卸表で何かを分析しようとすると、必ず違和感が出てくる。「あれ、これ比較していいんだっけ?」「いや、これは粒度が違うから……」と、議論が止まる。

結果、棚卸表は「眠った資料」になります。これが、業務棚卸が定着しない最大の理由です。

 

3. ファンクションレイヤー(FL)という解法

この問題を解決する道具が、ファンクションレイヤー、略してFLです。

業務を、粒度の違う6つの階層に分けます。

FL 単位 主な責任者
FL0 存在単位(理念・ドメイン) 経営層
FL1 事業機能(バリューチェーン) 事業部門責任者
FL2 提供価値の流れ(バリューストリーム) 部門横断責任者
FL3 業務プロセス(判断サイクルの主舞台) プロセスオーナー
FL4 単位業務(部署間ハンドオフ) 現場管理者
FL5 単位作業(担当者間ハンドオフ) 担当者・リーダー

業務棚卸表で使うのは、主にFL3・FL4・FL5の3階層です。ここを揃えるだけで、業務棚卸表の精度が劇的に上がります。

 

4. FL3とは何か——「件」として数えられる最小単位

FL3が業務棚卸表の核心です。これを最初に押さえてください。

FL3は、3つの条件を満たす業務の単位です。

  1. 提供価値要素を担う(お客さまに何かを届ける塊として意味がある)
  2. E2Eで完結する(始まりと終わりが明確)
  3. データ上、「一件」として数えられる

たとえば製造業の受注処理プロセスは、「受注Aが入る → 与信確認 → 在庫引き当て → 出荷指示 → 配送 → 入金」と一連で完結します。これで「受注1件」と数えられる。だから、これはFL3です。

逆に「与信確認だけ」を取り出すと、これは「1件」として数えられません。受注全体の一部だから。だから、これはFL3ではなく、FL4かFL5のレベルです。

世間一般の業務棚卸表が混乱する理由は、ここにあります。「業務」と一言で言っても、FL3レベルの「受注処理」と、FL5レベルの「与信確認」を同じ階層にしてしまう。

FL3を「件として数えられる単位」と定義すると、この曖昧さが消えます。

 

5. FL4は「部署間ハンドオフ」、FL5は「担当者間ハンドオフ」

FL3を1本決めると、その下のFL4・FL5は機械的に分解できます。

FL4は、部署をまたぐような大きな括り。「受注処理」というFL3の下なら、「与信確認」「在庫引き当て」「出荷準備」「配送手配」「入金確認」といったレベルになります。ハンドオフ、つまり「次の人へバトンを渡す」境目が、部署と部署の間にある単位、と捉えると分かりやすいです。

FL5は、担当者がやる具体的な作業。「与信確認」というFL4の下なら、「与信ランクを照会する」「過去取引履歴を確認する」「与信限度額を超えていないかチェックする」「承認者にエスカレーションする」といった粒度です。

ここで重要なのは、判断点(人が考えて決めるポイント)は、FL5レベルで現れるということです。「承認者にエスカレーションするかどうか」——これは判断です。FL5の中に、こういう判断点が散らばっている。

FL3全体を見渡して、FL5の中の判断点を全部洗い出すと、その会社の「判断地図」ができあがる。これがJOAの業務棚卸の核心です。

 

6. FL階層がもたらす3つの効果

FL階層で業務棚卸を作ると、3つの効果があります。

効果1:部署横断の比較ができる

営業部のFL3が5本、製造部のFL3が3本、経理部のFL3が2本。組織として10本のFL3を回している——という形で、部署横断の「業務本数」が数えられるようになります。これが、業務改革の優先順位を決める基礎データになります。

効果2:判断の集中ポイントが見える

各FL3の中のFL5を見て、判断点をカウントする。判断点が多いFL3=判断密度の高い業務プロセスです。判断密度が高い業務は、属人化しやすく、ボトルネックになりやすい。だから、業務改革の最優先ターゲットになります。

効果3:責任の所在が明確になる

FL3はプロセスオーナー、FL4は現場管理者、FL5は担当者——というように、階層ごとに責任者が決まります。「この業務、誰が決めるんですか?」という問いに、組織として答えられるようになります。

 

7. FL階層を「触れる」場所——JOARS

「FL階層を理解したい」と思っても、本だけ読んでもなかなか頭に入らないと思います。なので、私たちは「JOARS(ジョアース)」というツールを作りました。FL3-FL4-FL5をツリー構造で書ける業務棚卸表のクラウドツールです。

工房会員フリープランで、無料で1本の業務棚卸表を作れます。自分の会社の業務を1本だけ、FL階層で書いてみる——これが、FLを身体で覚える最短ルートです。

Excelで書こうとすると、罠①「言葉が揃わない」を回避できても、別の罠(コピペ地獄・セル結合・FL5追加地獄)にハマります。これについては、同シリーズの「Excel業務棚卸の限界」記事で詳しく書いています。

 

まとめ

今日のまとめです。

  • 業務分解の言葉が揃わないと、業務棚卸表は「比較できない資料」になる
  • ファンクションレイヤー(FL)は、業務を6階層に分ける方法
  • 中核はFL3(プロセス)・FL4(部署間ハンドオフ)・FL5(作業)の3つ
  • FL階層を入れると、部署横断の比較ができ、判断の集中ポイントが見え、責任が明確になる

「うちの業務棚卸、なんとなく違和感がある」「DXが進まない理由が分からない」と感じている方は、まずFL階層で業務を整理し直してみてください。それだけで、見え方がガラッと変わります。


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「うちの業務にも当てはまるか、相談してみたい」という経営者の方は、お気軽にお問い合わせください。

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本記事は、代表 佐野尚人のnote「判断の進化」マガジンで先行公開した記事を、HP用に加筆・再構成したものです。
note原典版はこちら:[ファンクションレイヤー入門 — 業務分解の言葉、社内で統一できていますか?]