本記事は note で先行公開した記事を、加筆・再構成したものです。
はじめに:あなたの会社の業務、「判断」と「作業」に分けられますか
同シリーズの前回記事「業務改善で全部直そうとする中小企業が失敗する理由」では、業務改善には順番がある、というお話を書きました。
オフィス業務において一番弱い環、つまりボトルネックになるのは「人の判断」だ、という結論です。
では、その「判断」を具体的にどうやって見つけるのか。今日は、誰でも5分で見分けられるようになる3つの質問をご紹介します。
この3つを覚えていただければ、自社の業務のどこに改善余地があるかが、一瞬で見えるようになります。
1. なぜ「判断」は見えにくいのか
3つの質問の前に、1つ大事なことを共有させてください。
「判断」と「作業」を見分けるのは、簡単そうに見えて実は難しい。なぜか。
判断は、やっている本人が「判断している」と気づいていないからです。
たとえば、ベテランの営業担当が見積もりを作る場面を想像してください。本人に聞くと「いつも通りやってるだけですよ」と答えます。
でも実際には、お客さまの規模を見て、過去の取引実績を思い出して、競合の価格感を考えて、値引きの幅を「なんとなく」決めている。
この「なんとなく」が、全部判断です。本人は作業だと思っている。でも新人にやらせたら、できない。
だから、判断を見つけるには「本人に聞く」だけでは足りません。別の切り口が必要になります。
それが、これからご紹介する3つの質問です。
2. 質問1:マニュアルだけで新人ができますか?
最初の質問。
「その業務、マニュアルだけで新人ができますか?」
できるなら、それは作業です。マニュアルに書ける時点で、手順が決まっているということですから。
でも「マニュアルはあるんだけど、結局先輩に聞かないとできない」——これは判断が隠れているサインです。
マニュアルに書けない部分、それが判断です。
具体例:請求書の作成
金額や宛名を入力するのは作業です。マニュアル通りでできる。
でも「この案件、分割請求にすべきか一括にすべきか」——これは判断。お客さまの資金状況や、過去のトラブル履歴を考慮している。マニュアルには書いていない。
請求書発行という業務の中に、こういう「判断」が隠れています。経営者から見ると「請求書発行」は1つの業務ですが、中を分解すると「作業」と「判断」が混ざっているのです。
3. 質問2:担当者が休んだら誰がやりますか?
2つ目の質問。
「担当者が休んだら、誰がやりますか?」
「誰でもできますよ」——なら作業です。
「○○さんじゃないとできない」「○○さんが休むと止まる」——これは判断です。しかも属人化した判断。
つまり、特定の人しかできない業務には、必ず言語化されていない判断が埋まっています。
具体例:出荷の優先順位を決める
倉庫の担当者しかできない、という業務。なぜか。
その担当者は、お得意先の優先度、トラックの積載効率、天候による遅延リスク、全部頭の中で計算しています。これは全部判断です。でも本人は「いつもの段取り」としか思っていない。
「あの人じゃないと無理」と言われる業務は、すべて属人化した判断の塊です。
4. 質問3:毎回結果が同じですか?
3つ目の質問。
「その業務、毎回結果が同じですか?」
入力業務は毎回同じルールで処理される。結果は一定。これは作業。
でも「同じお客さまからの注文なのに、今回はOK、前回はNG」とか、「同じ手順のはずなのに、人によって結果が違う」——これは判断基準がバラついているサインです。
結果がバラつく業務には、暗黙の判断基準が隠れています。
具体例:クレーム対応
同じ内容のクレームなのに、Aさんは返金対応、Bさんは交換対応。お客さまから見たら一貫性がない。
これは「どこまで対応するか」の判断基準が言語化されていないから起きます。判断基準が暗黙のままだと、人によってアウトプットがブレる。これがクレーム対応のような「お客さま体験」に直結する業務だと、ブランドへのダメージになります。
5. 3つの質問の使い方
整理しましょう。今日覚えていただきたいのは、この3つだけです。
- マニュアルだけで新人ができるか?
- 担当者が休んだら止まるか?
- 毎回結果が同じか?
どれか1つでも「No」なら、そこに判断が隠れています。
明日、会社に行ったら試してみてください。自分の業務を1つ選んで、この3つの質問を当ててみる。きっと「あ、これ判断だったんだ」という発見があるはずです。
6. プロがやるとこうなる——業務棚卸の効果
私たちのコンサルティング現場では、これを体系的に行います。「業務棚卸表」というツールを使って、会社の業務を階層で整理し、3つの質問で「判断」かどうかを判定していきます。
たとえば中小製造業の場合、業務を以下の3階層で整理します。
- 大カテゴリ(FL3):受注管理/製造管理/出荷管理/請求管理
- 手順レベル(FL4):受注管理の中に「問い合わせ対応」「見積もり作成」「受注可否判断」「受注登録」
- ステップレベル(FL5):1ステップずつ分解
このFL5(ステップ)レベルで、3つの質問を当てていきます。「No」が付いたステップは判断、というルールです。
すると、面白い現象が起きます。
全社で50ステップに分解した業務のうち、「判断」と判定されるのは10〜15個程度。さらにその中で本当のボトルネックは、たいてい2〜3箇所に集中している。
つまり、会社全体の業務を流れるようにするには、その2〜3箇所だけを集中改善すればいい。残り40ステップ以上は、今は触らなくていい。
これが、判断を軸にした業務改革——私たちが「JOA(Judgment-Oriented Architecture:判断志向アーキテクチャ)」と呼んでいるアプローチの土台です。
7. 明日からできる宿題
最後に、今日の内容を実際に試していただくための宿題を1つ。
明日、会社に着いたら、自分の業務を3つだけ選んで、3つの質問を当ててみてください。紙に書いてもいいし、頭の中だけでもいい。3つの業務を、「判断」か「作業」かに分けるだけです。
やってみると、たぶん驚かれると思います。自分が「作業」だと思っていたものの中に、判断がゴロゴロ出てくるはずです。
「これ全部判断だったんだ、どうしよう」と思ったら——それが正しい反応です。そこからが本番ですので。
まとめ:判断地図が業務改革の起点になる
判断と作業を見分ける3つの質問:
- マニュアルだけで新人ができるか?
- 担当者が休んだら止まるか?
- 毎回結果が同じか?
「No」があれば、そこに判断が隠れています。そして、判断が集中している場所が、あなたの会社のボトルネックです。
同シリーズの次回以降の記事では、見つけた判断を「どう分類するか」「どう設計手段を選ぶか」というテーマでDEM(判断進化マトリクス)の話を展開していきます。判断にも種類があって、「ルール化に向く判断」と「人の総合判断に残すべき判断」がある。その見分け方を、続きの記事でお伝えします。
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本記事は、代表 佐野尚人のnote「判断の進化」マガジンで先行公開した記事を、HP用に加筆・再構成したものです。
note原典版はこちら:[「判断」と「作業」を見分ける3つの質問 — 業務に隠れたボトルネックを5分で見つける]

